日本漆器協同組合連合会 理事長 土田 直 |
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就任の御挨拶 | |||
平成25年6月13日付で理事長に就任した土田です。どうぞよろしくお願い申し上げます。 さて、安倍内閣の誕生以来、いわゆるアベノミクスの影響により、景気は回復基調にあるようですが、相変わらず厳しい環境にあるといった声も多く聞かれます。我々漆器業界を含む伝統工芸分野においても大変厳しく、光が見えない現実にあります。 こうした中で、「伝統」の上に胡坐をかいているだけでは何も解決しないので、日本漆器協同組合連合会では、次の3点に重点を置いた活動により現状を打開していきたいと考えています。 第一に、消費者がわかりやすい表示に取り組んでいきます。「漆器」と言っても現在市場に多く流通しているのは「合成漆器」です。家庭用品品質表示法では、表面の塗装全てに天然の漆のみを使用したものが「漆器」と表示できますが、天然の漆以外の塗料(カシュー樹脂塗料、合成樹脂塗料等)を塗ったものは「合成漆器」となります。一般の消費者で、これら「漆器」と「合成漆器」の違いを理解されている方は少ないのではないでしょうか? また、最近ではライフスタイルに合った食洗機や電子レンジ対応の漆器類も増えてきていますが、その表記の基準が整っていないのが現状です。これらを踏まえ消費者がわかりやすく、安心して購入・使用できる環境を整えていきたいと思います。 第二に、優れた生活用具である漆器のPRに取り組んでいきます。漆器=伝統工芸品というイメージが強く、漆に抗菌作用の特性があり、衛生的にも優れた器具であることをご存知の方は少ないと思います。また、ほんの少しだけお手入れに気を使っていただければ、何十年も使用できる器具でもあります。こういった情報をインターネットなどで発信し、多くの皆様にPRし、漆器を使っていただきたいと思います。また、毎年秋に開催しています「全国漆器展」を継続していくことで、各産地の漆器を見て・触れていただく機会を設けたいと思います。 第三に、産地の活性化に取り組んでいきます。長く続くデフレの状況下において、産地は疲弊しています。現在の価格競争においては、職人にすべてのシワ寄せが来ています。漆器の製造工程はオートメーション化できない技術が多くあり、大量生産には向きません。そのため本来、価格競争に向かない商品であるにもかかわらず、現在の流通経路では、買い叩かれ、適正価格を維持できない状況になってきています。これらの現状を打開すべく、職人が疲弊せず、適正価格で流通できる仕組みを確立していきたいと思っています。現在、海外では日本食ブームと言われていますが、これが一つの突破口になるのかもしれません・・・ いろいろと課題は山積みですが、一つ一つ実施していくことで、業界が少しでも元気を取り戻せればと思っていますので、皆様におかれましては、日常に心のゆとりをもって、食卓にjapanと呼ばれる漆器(英語の小文字でjapan=漆器)を加えていただき、漆器業界をご支援いただければ幸いです。 2013年9月 |